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株式会社アゲハ

これまで受賞した人たちへのインタビュー

株式会社アゲハ

株式会社アゲハのインタビュー

みんなで創るバッグブランド「Orihime」:http://www.e-orihime.com/

羽化したアゲハ ~ 研究活動から起業への道のり

「起業チャレンジ2008」の最優秀賞受賞を経て起業したアゲハの受賞者3人のうち、木下さんと田中さんにインタビューを行いました。インタビュアーはVentureNowの竹内社長です。「起業チャレンジ」主宰のスカイライトコンサルティングの小川も少し会話に入っています。

竹内

今日はよろしくお願いします。お二人はまだ大学院生ですよね。

田中

はい。近々二人とも卒業します。

竹内

アゲハは、ビジネスプランコンテストなどで、いろんな賞をとってらっしゃいますよね。一番最初に受賞したコンテストは何ですか?

木下

創業前の2007年なんですけど、SFC(慶應大学 湘南藤沢キャンパス)のOpen Research Forumっていうので。研究発表会のようなものなんですが、その中でビジネスプランコンテストがあって、「The Best Business Process Award」をもらいました。(参考:慶大SFC Open Research Forum 2007が開幕、新たな産学連携の道探る

竹内

木下さんは元々、起業志向があったんですか。

木下

そういうわけではなかったと思います。

竹内

コンテストに応募したのは?

木下

経営情報学で、ITを使った新しい経営の動向の研究に没頭していた中で、それを机上の論だけじゃなくて、なんとか世の中に対して活かしていけるような、提案できるような活動がしたいなと思っていて、その方法についてずっと悩んでいたんですけど、ある時、研究の延長線上でビジネスプランを思いついて、それを実践しながら、何か提案できたらいいなあと思っていたんです。

竹内

じゃっ別に独立することにこだわっていたわけじゃなくて?

木下

元々、起業しようと思っていたわけじゃないです。当時、(SFCで)ビジネスプランを作る研究会があって、そこでは(田中さんも)一緒だったんですけど、その中で、半年間ブラッシュアップして、最終プレゼンで発表したら、教授に「これいけるよ。誰かやらないの?」って言われたのがきっかけですね。どうしようかなと思って、他のコンテストにも出したら、さらに他の先生方にも「ぜひ実現してみたら」って言われたのが、真剣に起業を考えるきっかけになりました。

竹内

すごいですね。アゲハについていらっしゃる顧問の方々はそうそうたる先生ばっかりですよね。

木下

そうですね。もともとSFCには「学問の知を現場に活かそう」というカルチャーがありますし、先生方もとても応援して下さいます。

竹内

そういう先生方が出資してってことではないんですよね。協力してあげるよって感じですか。

木下

そうですね。はい。

竹内

田中さんは起業に興味があったんですか。

田中

私も同じような感じですね。当時、私も大学院に進むことを決めていて。でも、そのとき木下とルームメートで、「起業しようかと思うんだけど」って言っていたので、これは手伝わないと!って思って、「じゃっ一緒にやろうか」と。研究会も一緒で、志向や研究内容が似ていたので。

木下

大学一年から、ほぼやっていることは共有してきていると思います。

竹内

住むところも一緒で。

木下

そうですね、1、2年は別々だったんですけど、どっちかの家にいることが多かったんで、3年から一緒に住んで。

竹内

じゃあ、木下さんが考えたビジネスモデルを、二人でブラッシュアップしていくって感じですか。

木下

アイデアの段階から、もう話はしてたり、、

田中

そうですね。似たようなことを同じように考えていたりして。

竹内

それでスタートして。

田中

そうですね。

竹内

「起業チャレンジ」は法人化する前でしたよね。その前にKBCビジネスコンテストで受賞していたんですよね。

木下

そうですね。その時、受賞したお金で、「起業チャレンジ」の最終審査のときには(PCケースの)サンプルを作っていけて、それで大きな賞(起業チャレンジ最優秀賞)をもらうことができて。

竹内

大きな賞(笑)

木下

いやいや、本当に私にとっては大きな賞でした。

竹内

「起業チャレンジ」がきっかけとなって、会社も設立してっていう感じだったんですね。

木下

そうですね。2月の第一週に卒論を書き終えて、田中に、「(起業チャレンジに向けて)そろそろ動き出そうと思うんだけど」って電話したのが、会社を作るファーストステップです。それまでは論文で忙しくて、アイデアはあっても、実際に職人さん探したりっていうのは後になっていたので、スカイライトさんの審査とともに創業準備を進めたっていうのがあって、、、

小川

その年は、「起業チャレンジ」を開催した最初の年で、12月のクリスマスがプラン応募の締め切りで、最終プレゼンが3月だったんですね。

木下

大学にたまたま課題を出しに行ったかなんかで、廊下にスカイライトさんの「起業チャレンジ」のポスターが貼ってあって、それ見て、締め切りが明日までだけど、クリスマスだけど、応募しなくちゃ!って思って(笑)

竹内

具体的なアクションの一歩につながったんですね。

田中

それまでに応募したのはビジネスコンテストっていう気持ちだったんですけど、「起業チャレンジ」を受けるときは、「実際ビジネスを始める準備をしなくちゃ」っていう気持ちで受けたので、審査のためでもあったけど、本当に起業するために準備を進めるという意味では、ブラッシュアップミーティングがきっかけというか、推進力のエンジンになったんだと思っています。そのとき初めて、ビジネスって、こうやって生産体制も整えて、Webも作ってってやらなきゃいけないんだなって、ちょっとだけ分かった。

木下

大学の中では、ビジネスプランを作るっていう時点で、すごく具体的なことをしているつもりだったんですけど、やっぱりそれをどうやって回していくかっていうことを考えるのは、全然違うなという感覚がありました。

竹内

ブラッシュアップミーティングはどんな感じでした?

木下

すごい真剣勝負でした。創業準備をすごいスピードで進めたんですよ。4月の1日に会社を設立したんですけど、2月の第二週から創業準備を始めて、そこから職人さんを見つけて、商品のサンプルを作って、販路を開拓して、Webを作って、4月の9日は、商品とWebをリリースしたんで、2ヶ月間で全部やったっていう、もう一回はできないですけど(笑)そのスピードを出すためのエンジンになっていたと思います。スカイライトさんの次のミーティングまでに、これを解決しなきゃいけない!とか。

竹内

いろいろ宿題出されながら(笑)?

木下

もうコストが発生しちゃってて。Webを作ったりとか、商品を作ったりだとかあったんで、もし(賞金が)取れなかったらどうしようってのがすごいあったんで。なので、さっきも言ったんですが、大きな賞だったんです。取れなかったら立ちあがらないかも、みたいな。

竹内

もしダメだったらどうしようって考えていました?

木下

はい。

田中

他のビジコンに応募しようとか。

木下

最初の方に受賞をいくつか連続しているのは、もし起業チャレンジ落ちたらどうしようっていうのがあって。

田中

そのせいで、最初の半年くらいはビジコンラッシュで。

木下

でも起業チャレンジで賞金が取れなかったら、稼ぎながらやらなくちゃいけなくて、相当きつかったと思います。

竹内

たしかにそうですよね。「起業チャレンジ」は300万円でしたよね。300万て大きい金額なんですけど、事業やっていく上では、すぐになくなってしまうと思うんですけど。使い道は考えていました? 資金繰りとか。

木下

そうですね、資金繰りの計画を作る上でも、ブラッシュアップミーティングの中でご指導を頂きながら作りました。まぁ、計画通りに進まないことも多くて、絶えざる修正が必要でしたけど(苦笑)。

田中

とにかく、なるべく経費をおさえる形で使っていましたね。やっぱり物を作らなきゃいけないので。

竹内

最初に商品ができたのは?

田中

4月の第一週には、1店舗分とWeb分の商品は作っていました。4月9日には発売開始予定だったので。工場の人たちが「木下さんがこう(無理を)言ってるんだけどっ!」とか言われて。(苦笑)

竹内

そういう馬力がないとだめなんですね。職人から探したんですよね?

木下

最初、Yahoo電話帳とかタウンページとか、ネットから探そうと思って。でも、まったく見つからなかったんです。

竹内

知り合いから辿るとかではなくて?

田中

結局そうなったんですけど。最初は、やっと番号見つけて電話しても「学生で、まだ会社作ってないんですけど」って始めると、「結局何したいの?」って具体的なことを聞かれて、話が通じなくて(苦笑)

木下

今もお世話になっている職人の方も、最初にお会いしたときは、すっごいびっくりしていました。「あれっ、あなたたちなの?」って感じで(笑)

1ヶ月あまりの期間の中、ブラッシュアップミーティングでビジネスプランを整理しながら、PCケースのサンプルを作り、販路を開拓していくという猛烈な勢いで起業に向かったアゲハ。ブラッシュアップミーティング中にどんどん起業準備を進めたアゲハ。製造したPCケースのサンプルをもって最終選考に臨みます。

竹内

アゲハさん的には、受賞までの期は気が気じゃなかったんじゃないですか。

木下

いろいろやっちゃって、もう、取れるだろう、取るしかない!自信があったわけじゃなくて、やらなきゃ、やるべきって思ってとにかく猛スピードで進んでいました。取れなかったら、既に発生したコストに対しては自分の貯金から支払うしかないけど、そうしたら、会社は立ち上がらないかもしれないって思っていたので、最終プレゼンは勝負の日でした。

竹内

実際、最終プレゼンのときって手ごたえありました?

木下

どうですかね。発表までは、ドキドキしていましたけど、その日までにやるべきことを全部やって、その日は出し切る!っていうのを目標にしていたので、出し切ったという感じではあったと思います。今、その当時のプレゼンは恥ずかしすぎて見れないです(笑)

竹内

その当時プレゼンした内容と、現時点で描いているようなことって、変わってきてるんですか?

田中

それが意外に変わってないですね。

木下

そうですね。軸は変わってないです。それは幸せなことだと思ってます。

竹内

小川さん、よく同じこと(変わらない軸を持つべきということ)を言われますよね。

小川

変えちゃいけないわけじゃないと思うんですけど、軸がないと進みにくくなると思います。

木下

それを変えるとなると、何を軸にしていけばいいのか分からなくなって、つらいと思いますね。

竹内

アゲハさんにとっての、その軸って何ですか?

木下

「ユーザーの声からヒット商品を継続的に生み出す仕組みを作る」っていうことですね。それに対して、このアプローチは難しかったってなっても、軸自体が変わらなければ、方向性が見えてくるというか。ものづくりの現場とか見て、面白いんですけど、もったいないと感じることがいっぱいある。お客さんの顔は見えていないし、そこをネットの力を使って、お客さんの声を反映できるような仕組みを作りたいなと思っています。

竹内

なるほど。スカイライトの後に、一回増資してらっしゃるんですよね。

木下

はい。セプテーニさんに。

竹内

あれはオファーがあったんですか。

田中

ビジネスコンテストがきっかけです。

竹内

なるほど。これだけビジネスコンテストで目立った存在だと、他のベンチャーキャピタルとか、放っておかないんじゃないですか。

木下

お声がけいただくことはありますね。セプテーニさんに増資していただいたときは、どこかから増資してもらえないかなと思っていたので、自分からいろいろなVCさんにお話に行ったりとかもしていました。

竹内

時期的にはちょうど不景気なとき?

木下

そうですね。一度決まりそうになった増資の話がいきなりなくなったりして、すごいテンパって、小川さんに相談させてもらったりとかしました。

竹内

こればっかりはタイミングがあるからね。どんないい会社でも。

小川

アゲハは特に製造業と見られる場合があるので、そうすると躊躇する人もいるんですよね。

竹内

でも、在庫をかかえてというビジネスモデルじゃないですよね。

木下

一部在庫もかかえていますね。カスタマイズは在庫なしの受注生産モデルなんですけど、そこから人気の商品を見出してマスプロダクトを作るっていうのがゴールなので、人気のものを定番化して在庫を持って、店頭でも販売する、そこでスケールさせるっていうモデルなんです。それが、今は自社ブランドでやっているんですけど、今後はほかのメーカーさんに対して、企画コンサル的に、ユーザーの声を使ってもっと売れるデザインを提案するってなっていけば、在庫リスクは減っていくし、製造業の比率も減っていくんですけど、まずは自社で成功モデルを作ろうっていうところから始めたので、初めは「あーパソコンバッグ作ってる会社でしょ」っていう風に思われがちですね。実態を見てもそう、というところがあったので。

竹内

そのことをVCに説明するのも大変ですね。アゲハさんに近いビジネスモデルって、国内に限らず、海外でも、あるんですか?

田中

ありますね。エレファントデザインさんとか、tanomi.comとか、海外だとQuirky(クォーキー)というWebサービスだとか、Etsy(エッツィー)というハンドメイド商品を購入できるサイトだとか。

木下

あと@cosmeなんかも近いかもしれませんね。ユーザーの評価情報とオンラインショップを結びつけているところが。

竹内

あーそうか、モデル的にはそうなのかもね。

田中

そのユーザーの声から売れる商品を作るというコンセプトは変わっていないですね。ただ、以前はユーザーさんにデザインそのものについて聞けば、いい答えが返ってくると思っていたけど、それでは商品企画に活かせるような答えは得られず・・・。じゃ、どういう聞き方をすれば、本当に、ユーザーさんたちの「おしい!」の声を聞けるのかなとか、特にそういうユーザーインターフェイスのところで仮説が鍛えられてきていると思っています。そういう意味で、「みんなの声でモノづくり」という軸は変わっていないですけど、もちろん進化してきていますね。私たち自身の企画力も上がってきていると思います。ここだけユーザーさんに聞けばヒット商品ができるというところまで、あと一歩だなと思います。

小川

木下さんの修士論文のテーマはそれなんだよね。

木下

はい、そうです。私は研究とセットで、ずっとやってきて。

竹内

テーマは?

木下

「ニッチの壁を突破する、ユーザー参加型商品開発プラットフォームモデル構築」

竹内

言い慣れてるから、噛みもせえへんし(笑)

木下

(笑)。これからも私は研究から離れずに、アカデミックな見地とかをどんどん生かして、わかったことを発信していきながら、「ユーザー参加型の商品開発」を広めていくというミッションを持っていきたいなと思ってます。

小川

アメリカに行ってきたんだよね。

木下

はい、この間「ユーザー・イノベーション」の学会にMITに行ってきて、ビジネスモデルを立てる前から、ずっとバイブルのように読んでた論文を書いた教授と直接お話ししたりして、とてもモチベートされました!

竹内

もちろん、ディベートしてみたりだとか。

木下

そうですね。世界中の研究者が集まって、たとえば、マスカスタマイゼーションの事例を500集めたという発表を聞いたりして、ビジネスにも生かせることが結構ありましたね。

竹内

へえ、すごいですね。英語はけっこう?

木下

いや、まだまだなんですけど。英語にストレスを感じない会社になりたいと思って、いま英語サークルを会社に作って、週に1回海外のサービスやサイトの事例を発表してケース・ディスカッションするっていうのをやって、結構楽しくやってます。

竹内

グローバルに展開していく感じですね。

田中

はい。(笑)

小川

言い切ったね(笑)

竹内

ここまで話を聞いていると、この前、話を伺ったエニドアと印象がずいぶん違いますね。同じ「起業チャレンジ」受賞者でも、経緯とかパターンが違うなと思って。

小川

いろいろありますね。タイミングもあるし。全然違うように見えますけど、共通しているところは、応募した時点で「起業しよう」と決めてることですね。受賞せずにお金が入らなかったらどうしようって考えていたとしても、「やる」ってことは、どちらのチームも決めてる。あと、ブレない軸を持っていることも共通していますね。

竹内

たしかにそうですね。

竹内

アゲハさんの今後の展開は?

木下

今までは、自社ブランドでやってきたんですけど、「ユーザーの声からヒット商品を作る仕組み」を作ったら、将来的には、それを既存のメーカーさんに提供していきたいと思っていました。最近は、その他社さんへの商品企画にもいろいろ力を入れています。

竹内

すごいですね。着々と。

木下

あと、ユーザーの声にすぐに反応できる生産体制というか、生産技術とか生産工程が重要なんだなということを痛感しまして、ユーザーにとって魅力的なオプションを用意しなきゃいけないと突き詰めて考えると、その生産技術や工程が重要だということで、バッグ以外の商材でもユーザーの声にすぐ対応できるような製造設備を持っているところとか、製造機械を作っているメーカーさんだとかとお話させていただいたりだとか、提携の可能性を探ったりだとかをしています。

小川

そういったことは田中さんの修士論文のテーマなんだよね。

田中

そうですね。私はアパレル産業の生産体制や、マーチャンダイジングの戦略などがテーマだったので。アカデミックな力を、ビジネスにも活かすという観点から、社会に何かしら価値を提供できる。そういう会社であり続けられれば、と思っています。

竹内

なるほど。すばらしいですね。今後もがんばってください。今日はありがとうございました。

大学での研究活動を実践するために起業し、着々と事業を展開していくアゲハ。「ユーザーの声からヒット商品を継続的に生み出す仕組み」を実現すべく、活動を続けています。ユーザーの声をどう活かすかというテーマは、日本だけでなく、全世界の製造業にとってかなり普遍的な課題です。それを自分たちでモノを作るという土台の上に築いていくことは、大変ですが、確実な進め方といえるでしょう。今後の活躍を期待しています!

Profile

  • 木下 優子(キノシタ ユウコ)

    株式会社アゲハ 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、同大学大学 院の政策・メディア研究科への進学と同時に「株式会社アゲハ」を設立。現在、同大大学院政策・メディア研究科修士課程 2年在学中。実践と研究を通じて、ユーザーとメーカーを繋ぐ新たな商品企画プラットフォームを構築すべく、産学連携活動に奮闘している。
    ブログ:http://ameblo.jp/yuu-orihime/

  • 田中 里美(タナカ サトミ)

    株式会社アゲハ 取締役。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、同大学大学院の政策・メディア研究科への進学と同時に「株式会社アゲハ」を設立。ファッション産業における商品政策についての研究経験を活かし、同社で、戦略立案からマーケティング、デザインまで幅広い業務を担当。
    ブログ:http://ameblo.jp/minonaru/

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